「9万課金でキャラ確定」が総付景品としてほんまにアカンのか? – 課金問題 補足検証編

課金アイテム問題についての解説と見解

こちらの記事へのレスポンスをTwitterでやり取りしていく中で、色々調べた結果、やっぱり今回のケースは「ブラック判断が濃厚」という結論に至りました。私も法律は素人ですが、前職では技術責任者としてシステムに法的問題がないかの検証にも携わっていた経験があり、現職でもリリースタイトルがそういった問題に抵触しないかを管理する立場として、少なくとも何も知らずにプレイしているだけの人よりは知見を持っており、またより深く持たないといけない立場の人間として、今回調べた経緯と「9万課金でキャラ確定がどうアカンのか」をまとめたいと思います。

※ただし、当たり前ですがブラックだと断定する権限は私にはありません。ただ、手に入る資料から現時点で判断できる結論としてはホワイトと判断出来ない理由が多々あるため、ほぼブラック濃厚、としています。

※ホントは寝たかったんだけど寝つけなかったので、私の夜更かしにお付き合い下さい。


そもそも総付景品とは?

景品規制の概要

一般消費者に対し,「懸賞」によらずに提供される景品類は,一般に「総付景品(そうづけけいひん)」,「ベタ付け景品」等と呼ばれており,具体的には,商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等がこれに当たります。商品・サービスの購入の申し込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当します。

「ガチャによらず、9万円以上購入した顧客に対してもれなく提供する金品」と表現すると、まさに今回のケースに当てはまります。

「ゲーム内キャラクターが”金品”として扱えるのか?」については、後述しますが、今は「扱います、と消費者庁が過去に言ってる」とだけ言及しておきます。


総付景品の上限価額とは?

まんまですが「1万円買った人に2千円以上の景品あげたらアカンよ」というものです。ちなみに例外がたくさんあるそうで、割引券などは対象外です。600円のラーメンに180円の餃子をつけるのも、OKです。(200円以下だから)

ガリガリくん、当たりが出たらもう一本、もOKです。(同一商品なら値引き行為に該当) 詳しくはURLをチェック。滅茶苦茶ケースが多いので、時間ない人はスルー推奨

よくある質問コーナー(景品関係)


総付景品上限価額を超えたら何故アカンの?

今回の重要な点です。

「5万円のおまけがつくから、1万円で商品買うたった!儲け!なんでアカンの?得したやん」というのが、一般消費者的な感想です。ただ、ここで問題なのは、「1万円の商品を、消費者は買う必要があったのか」です。

上限価額が設定されている意図はまさにそこにあって、景品表示法の目的は「不当表示や不当景品から一般消費者の利益を保護する」事であり、「付随する景品によって、本来購入するつもりのない商品を購入させられる」事が、問題であると言えます。

事例でわかる景品表示法

消費者が景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買
わされてしまうことは、消費者にとって不利益になるものです。ま
た、景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービ
スの内容での競争に力を入れなくなり、これがまた消費者の不利
益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。景品表示法では、景品類の最高額、総額等を規制することで、
一般消費者の利益を保護するとともに、合理的な商品選択を妨げ
ることを防いでいます。

今回のケースは言うなれば、9万円支払って購入した「目的のキャラ以外の、ガチャから出てきた要らないキャラ・アイテム達」が、本来の目的のキャラ購入のために「必要なく購入させられた金品」という扱いになります。 


「9万円で手に入るなら安いモンじゃん!」「確定入手が保証されてるなら、得してると思うんだけど」

まさにそう考えている人達こそ、景品表示法が保護しなければならない消費者です。まさに今、優良誤認を起こし、割高なものを買わされそうになっている人達です。

また、「9万円払わずに済むかも…」と言う誤認も、このケースでは問題です。(最初の記事で言及した内容です) 最終的に9万円で手に入る事が確定していたとしても、9万円払うまでに手に入るかもという状況自体が結果的に射幸心を煽る形となり、9万払うつもりがなかったユーザも9万まで課金してしまう可能性がある点で、問題になりえます。

これが「9万円で特定のキャラを指名購入可能!」だったら、何も問題はありません。どうぞ購入して下さい。問題は、繰り返しになりますが「特定のキャラを買うために、全然関係ないものに9万円払わされている事」である点です。

これで目的のキャラが1.8万円以内で排出される想定の価額であるなら、総付景品上限価額的には問題ないとも言えます。ここは前回の記事で言及した通りです。


「ギャンブルは外れるから燃えるんだ、放っとけ」

ギャンブルが燃えると感じてそこに投資する価値を見出すのは個人の感情であり自由ですが、「景品表示法が守るべき一般消費者」は、そうでない人も含みます。単純に「9万で欲しいキャラが手に入るなら…」と課金する人はたくさんいるでしょう。

こう考える人そのものは、(当然熱が冷めた後に「やっぱりやめておけば良かった」と思うであろう事は想定されるながらも)守られるべき一般消費者という概念から若干外れていると見れるかもしれませんが、それが景品表示法の違反を無視していい理由にはならないでしょう。


「無料で集めた”石”で回しても貰えるけどそれでもダメなの?」

これも、「無償で手に入る人が存在している事」が、「有償で購入する消費者が存在する事」を無視していい理由にはなりえません。実際に9万円払って優良誤認からの購入に至ってしまった消費者が存在するなら、それは景品表示法上で議論される問題に変わりありません。


アイテム・キャラクターは景品なの?

「ゲーム内のアイテム・キャラクターはそもそも景品表示法における景品として扱われるの?」という問題があります。

現時点では、件のキャラの価値は、排出確率0.01%と見積もった場合に300万円の価値がある、という想定ですが、それがそもそも値段をつけられない、実体のないデータに過ぎないのでは?という指摘があります。

しかし、これ以上ない前例が、既にあります。

「コンプガチャは、なぜ違法? ~景品表示法・景品規制の基礎知識」

過去にコンプガチャが消費者庁に正式に違法判断された際に、

(前略)「コンプガチャ」によって提供されるレアアイテムは、有料ガチャによって特定の数種類のアイテム等を揃えることを条件に提供されます。

つまり、有料のガチャでアイテム等を購入することを条件に提供されるので、「コンプガチャ」で提供されるレアアイテムは、有料のガチャという取引に顧客を誘因するための手段(平たく言えば、レアアイテムが欲しいからこそ、有料のガチャをする)とみることができ、また、有料のガチャという取引に付随して提供されるものにあたります。

さらに、このレアアイテムによって、オンラインゲーム上で敵と戦ったり、仮想空間を飾ることができるなど、ゲーム上で使用することができることから、レアアイテムは経済上の利益にあたると消費者庁は評価し、「コンプガチャ」によって提供されるレアアイテムは、景品法上の景品類にあたるとしています。そうすると、コンプガチャに景表法の景品規制が及ぶことになります。

ここで言及された「有料のガチャという取引に付随して提供されるもの」がまさに今回問題になっている「9万円のガチャに付随して提供されるキャラ」と一致します。そして、そうしたゲーム中のアイテム・キャラクターが、景品法上の景品類にあたる、と明言されています。

これにより、今回の提供キャラは、前例によって「景品である」と既に消費者庁によって定義されています。

前回のコンプガチャでは景品規制の「カード合わせの禁止」に抵触したのが、今回は「総付景品上限価額違反」という別問題で抵触する事になりうるという事です。

今回のケースでは「有料のガチャという取引に顧客を誘因するための手段」が「9万円でキャラ確定ルール」に当たります。


そもそも1.8万円以上の価値があるのか?

他に入手手段が存在しない以上、そう定義せざるをえません。少なくとも「9万円で交換可能」「ガチャから排出可能」である限りにおいては、そのカードの評価額は、少なくとも9万円~という評価になってしまいます。

「同キャラがかぶった時に貰えるムーン」の導入によって、「好きなキャラとの交換が可能になる」ようですが、これによっても対象キャラクターの価値が計算出来るようになると見られます。

「同キャラがかぶってムーンが貰える期待値」から、「好きなキャラが貰えるのに必要なムーン量」に対して、「必要ムーンを得るのに必要な課金額」が算出できたなら、ガチャでの排出確率と比較した上でそれよりも下回るなら「ムーンを基準としたキャラクターの価値」が導き出せるかもしれません。

そしてそれがまだ1.8万以上なら、やっぱり総付景品上限価額の違反となりえます。


ムーンがあるから問題ない、とはならないの?

たとえムーンが存在したとしても、仮に存在しなかったとしても、どちらにしても総付景品上限価額の違反を犯している疑いがある状況とは無関係の問題であり、ムーンの存在が総付景品上限価額違反を容認する理由にはなりえません。逆にムーンだけだったら景品表示法上の問題はなかったのではないか、とすら言えます。

ただムーン自体もルールを読む限りは「同キャラ重複」でしか入手出来ず、依然として大量の不要なレアアイテムが大量に出る状況においては、当初議論されていた「対象キャラクターの入手確率に対する優良誤認」は解決しないかもしれません。同一SSRキャラが重複する頻度が著しく低いのであれば、結局ユーザは「ムーンが手に入るからガチャ回しまくれば好きなキャラが手に入る」と誤認しながらこれまでと大差ないレベルで課金してしまい、最終的には目的のキャラが手に入ったとしても、想定価額を遥かに上回ってしまう結果になりえます。こうなったらこれまでと何も変わりません。ただ、これは交換レート等によって判断が分かれる問題なので、現時点では何とも言えません。良心的なレートであったならば、何も問題はなくなるかもしれません。


以上が、「ブラック判断が濃厚」と現時点で結論づけた理由になります。

この記事が、多くの人の理解を深める事や、議論の活発化につながってくれれば幸いです。

私に対して意見がいただけるようであればお寄せいただいても構いません。法知識全般も、個々のケースに対する理解も、より深めていきたいので、歓迎します。

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