ゲーム開発者になりたい人へ

この記事は、ゲーム開発者(ここはプログラマではなくゲームデベロップに携わる人全般を指します) を目指している方向けに書いたものです。

既に業界でベテランの方々にとっては、「ひよっこが偉そうに、見当違いな事を吹聴して…」と思うかもしれませんが、今私がいる位置はまだこの程度で、おっしゃる通りひよっこですが、今からそちらに参りますので見守っていてくださると嬉しいです。

[[MORE]]

DeckDeFantasyリリースから1週間弱が経ちましたが、あまり具体的なところは申し上げられないながらも、ひとまず個人でのリリースとしては評価やユーザ流入などにおいて成功と言える水準に達したのではないかな、と思います。おかげで、この水準が保てればなんとか子育て・生活を安定して維持出来そうです。本当にありがとうございます。勿論、ここから更にアップデートしていってゲームとしてさらに完成度を上げていきたいと思っていますし、次タイトルの企画も並行して進めていっています。

今作の開発ではβを長く取ったのですが、その期間に「ゲーム開発者を志望していて、経験を積みたい」という方がいらっしゃいました。また、リリース後もそういう方との接点がありました。「自分がゲーム開発者になっていく上での参考にしたい」というのが、彼らの共通の姿勢でした。

人に教えられるほど熟した人間だとはまだ思っていないですが、それでも複数の企業でテクニカルマネージャを経験して、個人としてもそれなりの品質の製品を仕上げて世に出しある程度の評価を受けるに至ったからには、今の私はそこにまだ至っていない人に対して何か言ってもいいんじゃないかな?というおこがましい思いから、ゲーム開発者を志望する人に向けて、偉そうな事を書こうと思い立って、この記事を書き始めました。

記事で述べる事は、ゲーム開発者を志す上で重要な3点です。

茶菓子でも食べながらまったり読んで下さい。


その1. 「作品を仕上げないと評価されない」

私が初めてゲームを作ったのは、高校生の時です。

RPGツクール2000で作った作品で、今見たら恥ずかしさのあまりに憤死するレベルなのですが、そんな拙作でも、とあるコンテストに入賞し賞金をもらいました。(覚えてないけど、賞金は多分Mtgのカード購入費に消えました)

この時にゲーム開発者を本気で志したのですが、大学を出た後は普通のSEとして就職しました。就職する時点では、まだ迷いがあったように記憶しています。ただ、それでも個人としてのゲーム開発は継続していました。仕事の合間に、年に平均1作程度は開発を続けてきました。

そうして来たのは、単純に「作品を仕上げないと評価されない」からです。

私の脳内には年中作品のアイデアがひしめいていて、アレも作りたい、コレも作りたい、と考え続けています。きっとこの作品は作ったらスゴク面白いに違いない、きっとスゴク評価されるだろうなフフフ… と考えるだけならタダなのですが、それが作品として実現されなかったら、それは誰にも評価されません。抑えきれない自己顕示欲の発露としてそういうネタをブログに上げたりもたまにしますが、ちょっと話のネタになる程度で、それ以上も以下もありません。

よく自作ゲーム界隈で「エターナる」みたいな表現を目にする事がありますが、要はそれが一番まずいという事です。

クリエイティブ全般に言える事だと思いますが、完成した作品を提供出来ない人は評価されません。体験版など一応の形としてリリースする事が出来るところまで来れば評価や反応もありますしそこまで仕上げる事が出来る人という評価は出来ますが、そこにすら達した事が一度もないのであればその人は「何もした事がない人」と同じです。

まだ作品を仕上げた事がない、という人は、とりあえず作品を1つ作って、公開してください。短期間でも、ひどい出来だって全然構いません。「作って、出した」経験を持ってください。これがない限り、誰にも評価されませんし、何より自分を評価する事も出来ません。自分を評価出来ないというのは、自分がどこまでの規模・品質の作品を作れるか、どの程度の評価を受けられるクリエイターか、世間が自分の作品をどのように感じるのか、一切わからない状態です。その状態で考える様々な事は、全く何の信憑性もない、独りよがりな妄想です。このような状態で、良い作品を作れるようになるための識見が身についていくはずがありません。

まず作品を仕上げて、公開してください。

…ちなみに、ここで言う”作品”は、それぞれが志すものに関するもので良いです。プランナー志望なら、企画書になるし、デザイナならイラストやデザインです。ゲーム本体に限りません。ただ、公開する先は可能な限りオープン、あるいは市場評価に近しい場所(コンテスト、イベント、業界の人に見てもらう等)にしてください。

また、「なかなか仕上げられない」という人は、スケジュールを立てるといいです。基本中の基本ですが、基本だけに重要で、うまくいかない人はその基本が出来ていません。完成に必要なものがあとどれだけあるかを列挙し、目標日を定めて、割ける時間帯を確認して、1週間の目標・1日の目標に細分化する。勉強や仕事、同人活動なんかでも普通に使えるやり方です。(5分に1ページトーンを貼れば間に合う、とかそういうミラクルを妄想するのはスケジュールとは言いません、念のため) そして、何より目標達成率をこまめに振り返る。これは、遅れを把握するのも勿論ですが、「ここまで進めた!」という進捗を可視化する事でモチベーションアップにつながります。


その2. 「俺なら”最高のゲーム”が作れるのに!」

「ソーシャルゲームが氾濫する今の世の中、出てくるゲームはクソばかり!もっとワクワクドキドキするような作品はないのか?俺にウン億円でも出資してくれたら、最高のゲームを作ってやれるのに!」

そんな強い思いで、ゲーム開発に身を投じる。悪い事だとは思いません。素晴らしい信念だと思いますし、信念を持たずにものづくりをしても良いものは出来ないと思います。是非、最高のゲームを創り出して、世の中をアッと驚かせて欲しいです。そうしたら私も遊びますので、教えてください。(ソーシャルゲームがダメだとは、私個人としては思っていないですが…それはまた別の話なので置いときます)

でも、ちょっと待ってください。
あなたは本当に「作れます」か?

仮に、あなたが予算ウン億円のゲームを開発してやる!と思い立って、行動を開始したとします。何が必要になるでしょうか。まず、”最高のゲーム”の企画が必要です。何も考えずにエディタに向かったところでゲームは出来ません。誰もがお金を払ってでも遊びたいと思えるゲームの企画が必要ですから、まずはそれを練らないといけません。そのアイデアはもうあると言うのなら、次は予算です。ウン億円出資してもらえるように、出資者に対してプレゼンして「ウン億円かける価値がある」と思わせてください。何とか出資してもらえたとして、今度は人員が必要です。開発したゲームがユーザの手元に届くまでに、どれだけの人員が必要でしょうか。プログラマ、デザイナ、サウンドクリエイターが必要?広報やレベルデザイナ、シナリオライター、他にも様々な人員が必要でしょう、会社を立ち上げるなら経理他諸々も。どのポジションのメンバーに、どれだけの能力が求められるか、面接をして各ポジションに必要な能力を持っているか否か判断しなければなりません。人員が集まったとして、彼らも人間ですから、人間として仕事をするためにスケジュールを組み、指示を出して、進捗を確認し、必要なら精神的なケアもし、メンバー間の問題を仲裁し、プロジェクトを滞り無く進行させなくてはなりません。それも、予算をオーバーしないよう、また工期の遅れもないように。必要なイラストや音楽を外注するなら、外注先とのコミュニケーションも発生します。契約書の作り方はわかりますか?いざ製品が仕上がりつつある時、テスターからのフィードバックを受けたとして、どれを採用し、どれを不採用とするか?実際にプレイしてみたら思ったほどテンポが悪い、バランスが悪い、面白くない…漠然としたマイナス評価が多く出た時に、何をすれば”最高のゲーム”に引き戻せるか、具体的な方法を考えなければなりません。”最高のゲーム”が出来上がった、でもそれが”最高のゲーム”である事は、まだあなたとあなたのチームしか知りません。どうやってユーザにそれを伝えて、ユーザの手元まで届けますか?誰もが”最高のゲーム”だと感じてもらえるような広報、宣伝が必要になるでしょう。手元に届いたユーザから不具合の報告や、無茶苦茶な要望が届いたら、どう対応するか考えなければなりません。炎上などもってのほかです、”最高のゲーム”ですから。

長々と書きましたが、ここでもう一度聞きます。

あなたは本当に「作れます」か?

ゲーム開発は、紙の上に妄想を落書きしたらその通りに勝手に出来上がるものではありません。鬼のような量の煩雑な作業、答えのない取捨選択、したくもない折衝や調整、迫り来る工期や予算オーバーの壁が開発者を待ち受けています。それはものづくりの常で、避けられないものです。

何かを成功させるために必要な方法を正しく知らない人に、それを成功させる事は出来ません。「こういうゲームを作りたい」と思っているだけで、「こういうゲームを作るには、こういう事が必要になる」を知らずにいては、永遠にそのゲームは完成しないでしょう。

ゲーム開発者を目指したいと本気で思うなら、素晴らしいアイデアを胸の内に膨らませるのとは別に、「目標達成に必要な事は、具体的には何か」を調べて、知ってください。実際にその過程を自分の手で携わる事が正しく想像出来るようになれば、その目標達成が確実に近づきます。


その3. 「あなたには、ゲーム開発は向いていません」

私が本格的にゲーム開発を始めた最初の作品は「B10000」というゲームでした。これはダンジョンRPG「B100」シリーズの 前身 「B2」のさらに前身で、ASP.netで書かれたブラウザRPGでした。この作品は地下300Fくらいまでの敵をいちいち手作りで開発していたのですが、さすがに10000F分のデータを人力で作るのは不可能だと判断し、B2の開発に移りました。こちらはフロアごとに敵が強くなるシステムで、数百件のアイテム・モンスターだけで数万フロアのゲームプレイが可能な構成になっていました。

このB2の開発時、私は2chの某所でコテハンをつけて「こんなん作りました」とURLを貼って宣伝し、スレ住人とやり取りをしました。

それはもう酷いもので、あちこち不具合だらけ、バランス無茶苦茶、UI劣悪で最初は猛烈に叩かれました。しかし、2週間ほど睡眠時間を削って要望や報告を全て対応していくうちに、そのスレのテンプレに記載されるような殿堂入りゲームにまで成長しました。(まぁ、その後サーバがブッ飛んでバックアップ取り忘れて電子の彼方にゲームごと消え去ったんですが…)

この時、私は無数の罵声を浴びせられました。今でも、匿名掲示板で私の事を叩いている人はいます。「ゲーム開発に向いてない、お前なんかに面白いゲームが作れるわけがない」と言われた事もありました。インターネットを見ていても、リリースされたゲームをひどく罵倒し会社ごとなくなれば良いと言うような事まで言い出す人もいます。

ここで言いたい事は、罵声を浴びせられてこいという話ではありません。誰もがそういう声を真正面から受け止められるほど精神的に強くはありませんし、無限に耐えられる人はいません。

あなたに、あなたの作品に、「つまらない」「向いてない」「才能ない」と言う人が必ずいます。絶対います。全く目立たない時は誰も見てないのでいないかもしれないですが、作品が人目に触れだしたら絶対出てきます。でも、そこで作る事を止めてはいけません。

あなたに本当に才能がないかどうかなんてのは、リリースされたゲームが世間の批判を受けた後、あなたが本当に死力を尽くして作品を改善し、再び世間に見せて、その評価を見るまで確認できません。自分で作ったゲームは、作品が人の目に触れるまで100%の客観評価は出来ないものです。(絶対良いと思っても、大概どこかにズレがあります) 最初に出したものが受け入れられないなんてのは、当たり前の事です。

初めて作品が人目に触れて、否定されたら、その否定を覆せる要素を作品に反映しましょう。そしてまた人目に触れさせましょう。反応が変わったなら、あなたには次のステップに進むだけの力があった、という事です。才能がないと言った人たちに一矢報いてやったぞ、と鼻を鳴らしながら、さらに次のステップに進みましょう。

「あなたには向いていません」。そう言われてからが本番です。一度の批判で諦めないでください。


そして… 「何をしようが、文句を言う」

人も必ずいます

。これも忘れずに。


おまけ. 「1.01^365 = 37.78…」

DDFユーザの方から、「仕事が速い」「短期間でこの作業量はスゴイ」とお褒めの言葉を多数いただきました。ありがとうございます。

今の私は在宅でゲーム開発をしていますが、勤めに出ていた頃にはどの職場でも「仕事が速い」という評価を受けていました。前の職場を退職する直前に、「どうすればここまで速く出来るか、残るメンバーに教えて欲しい」とまで言われました。きっと役に立つと思うので、その時にメンバーにした話もここでついでに書いておこうと思います。

何か特別な事をしているわけでもなく、「こうすれば何%速くなる」というような手法があるわけでもないです。
単に、「前回よりも速く仕上げる方法を探る」事を繰り返すだけです。

私は、社会人になってから10年以上、毎日これを続けてきました。時間のかかる作業なら、自動化して終わらせられないか?同じ手順でも、ここを省けばもっと速くなるんじゃないか?情報把握に時間がかかるせいで仕事が遅くなるなら、情報把握を速く出来るような配置にすればいいのではないか?今までやっていた手段はベストに見えるけど、別のより良い手段が、まだ知らないだけであるんじゃないか?マウスよりもキーボードのが速くないか?口頭説明だけよりも図を描いて見せた方が相手の理解は速くならないか?毎日する仕事でも、毎日疑問の目を向けて、可能なら改善の手を加えていく。

ただひたすらに、昨日よりも速く、正確に、少ない注意力でも間違いのない方法を探る。忍者が高くジャンプ出来るようになるために成長する竹の上を毎日飛ぶように、今よりももっと良い方法を探し続ける、これをひたすら繰り返していたら、今の速度が自然に出来るようになりました。

この話をした後に引き合いに出された話ですが、「1日に1%の改善を行うだけでも、1年やったら37倍になる」というのが、楽天の三木谷さんが語った言葉らしいです。

改善の糸口は、必ずどこかに転がっています。ないと思っているなら、あなたが知らないだけです。そうでなければ、人類はここまで進歩していません。そう考えながら毎日を過ごせば、いつの間にかあなたの生産性も向上しているかも。

ただし、あなたの改善が、全体のバランスに影響を与えるなら、注意が必要です。あなただけ速くなって、他の人がその影響で遅くなるなら、それはやらない方が良い改善です。他の人のマイナスをあなたのプラスで賄わないといけなくなるなら、あなたが大変になるだけで、しかも嫌われる原因になります。


まとめ

  1. 作品を仕上げて、自分を評価できるようになろう
  2. 目標達成に必要な、具体的な方法を知ろう
  3. 一度の批判で諦めるな、次の手を考えろ
  4. 日々1%の改善を

この記事が、少しでもゲーム開発者を目指す人の助けになれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました